乾癬
乾癬を治そう!
乾癬は白色膜やフケのような表面をもち、赤いやや盛り上がった円形の皮疹が体のあちこちにできる皮膚疾患です(尋常性乾癬)。
海外では100人に2〜3人にみられる疾患ですが日本では1000人に2〜3人と少ないためかあまり知られていない疾患です。
痒みは半数の方に見られます。
1つ1つの皮疹は1-2cmのこともありますが、体全体に広がることもあります。
できやすいところは肘、膝、おしりなどのすれる部位や、関節部などキズのつきやすいところです。また頭にも良くできます。爪の変形が起こることもあり水虫と間違われ治療されていることもあります。
感冒、細菌、ウイルス感染や治療の中断などをきっかけに、急に悪くなって、皮疹に膿がたまった状態になることや(膿疱性乾癬)、全身が赤くなることもあります(乾癬性紅皮症)。
乾癬が起こす関節炎(乾癬性関節炎)
基本的に皮膚の病気ですが、1割ぐらいの患者さんに関節炎(乾癬性関節炎)が見られることがありますが、通常内臓に及ぶことはありません。乾癬性関節炎は手指、足の関節にできる末梢型と首、胸や腰の関節炎を起こす中枢型があるほか、胸の正面の関節が痛くなるタイプがあります。進行すると指の変形や首や腰が回らない状況が起こります。余り知られていない疾患ということもあり変形性関節症や慢性腰痛として放置されていることもあり注意が必要です。当院には乾癬性関節炎に詳しいリウマチ医と皮膚科医が在籍しており、正確な診断の基に、関節の炎症や変形を止める専門的な治療を行うことができます。関節変形を起こさないためにも初期での治療が大切です。皮膚炎があり腰、首、手足の痛みがある方は一度受診ください。
病気の詳しい原因は未だわからない疾患ですが、何らかの原因で敏感になった白血球が皮膚の表面に出でてきて、皮膚に炎症を起こしてしまう疾患と考えられます。他の人に伝染することはありません。皮膚を引っ掻く、感染症、喫煙、肥満、不規則な生活などは病気を悪くする要因といわれています。
乾癬の治療
外用治療
治療は小範囲の場合は、副腎皮質ホルモン薬(ステロイド薬)の外用やビタミンD3の外用薬を組み合わせて皮疹をコントロールします。皮疹の部位や病状に合わせて外用薬の種類を選択します。ローション剤やシャンプー剤などもあります。ビタミンD3は大量使用で全身的副作用が出ることもあるので注意が必要です。
悪化要因を減らす
皮疹が悪くなる原因を減らすことも重要です。表面の白い皮(鱗屑)を取ったり、ナイロンタオルでこすったり、引っ掻いたりすることを止めます。喫煙(電子たばこも)、肥満、便秘、不規則な生活を避けるようにします。体の中に炎症があると悪くなるので、歯科疾患、扁桃炎、副鼻腔炎、胆石(胆嚢炎) などの慢性の炎症があるときはその治療を行ってください。
光線療法
紫外線の照射治療を用いることもあります。広範囲の皮疹ではナローバンドUVB治療が、関節部などの治りにくい部位にはエキシマ光線などによる治療が行われます。
全身治療
皮疹が全身の10%を超える重症の方や、顔面等の目立つ部位の症状が強い、仕事上皮膚症状をどうしても避けなければならない患者さんのほか、関節炎がある患者さんには、全身的な治療を行います。
全身治療には
内服療法
内服療法にはオテズラ®(アプレミラスト)、ソーティクツ®(デュークラバシチニブ)、リウマトレックス®(メトトレキサート)、シクロスポリンAがあります。
オテズラ®(アプレミラスト)
比較的新しい経口乾癬治療薬です。PDE-4という酵素を阻害して白血球の過剰な機能を抑制し、皮膚の炎症を取ってくれる薬剤です。重篤な副作用は限られており、副作用は下痢と体重減少がみられることです。初めての治療に当たり副作用を避けるため、徐々に薬剤の量を増やす方式が決められています。関節炎にも効果があります。新しい薬剤なので薬剤費が高めになります。
ソーティクツ®(デュークラバシチニブ)
ソーティクツは2022年から使えるようになった最新の経口乾癬治療薬です。乾癬を増悪するサイトカインによる白血球の炎症経路を抑制する薬剤です。有効性が高く、副作用も比較的少ない薬剤です。当院はじめ乾癬分子標的薬使用承認施設でしか使用ができません。ウイルス性肝炎、結核、カビなどの感染症などの有無を検査(胸部レントゲン、血液検査など)のうえ使用します。内科での使用前検査が必要な薬剤ですが、当院ではリウマチ内科と連携し、院内で治療を行うことができます。新しい薬剤なので注射薬ほどではありませんが、薬剤費が高めになります。
リウマトレックス®(メトトレキサート)
メトトレキサートは、関節リウマチにはよく使われていることから、最近になって、乾癬に使うことが認められました。関節炎に有効です。薬剤費も安くすみます。白血球や皮膚の細胞など全ての細胞の増殖を抑制するため、副作用に注意して、薬剤の使用になれた医師による治療が必要です。当院では、関節炎のある患者さんに、メトトレキサート治療に習熟したリウマチ内科と連携して使っています。
シクロスポリンA
シクロスポリンAは以前から使われている免疫を調整する薬です。ジェネリックもあり薬剤費が下がりましたが、乾癬では使用量が多くなるので、感染症に注意するとともに、血圧や腎機能に注意しながら使う必要があり、特定の患者さんだけで使用します。
チガソン(エトレチナート)
1985年から使われているヒフの増殖角化を調整するレチノイド薬ですが、副作用や催奇形性があり、ほかの治療が無効な重症の膿疱性乾癬などにのみ使用します。
抗体治療薬
経口薬で良くならない場合や関節炎が強い患者さんでは生物学的製剤(抗体製剤)を使います。皮膚科学会の承認施設でしか使用できません。
承認施設は大病院に限られていましたが、当院は2023年4月に県下でも数少ない乾癬分子標的薬使用承認施設となりました。生物製剤使用前には内科的検査を基幹病院ですることが求められていますが、当院では抗体治療に習熟したリウマチ内科を併設しており、治療前検査を迅速に院内で行うことができ、患者さんの経済的、時間的負担を減らすことができます。
定期的フォロー検査や上気道感染時の対策も、内科皮膚科の連携で迅速に対応させていただきます。
乾癬は傷やウイルス感染時に細胞が出す物質(インターリューキン:IL)の連鎖反応で悪くなることが知られています。炎症部位にできたTNF-αが皮下のプラズマ樹枝状細胞に働きIL-12/IL-23を放出します。これがリンパ球に働いてIL-17を放出させ、これが乾癬の皮膚炎をつくります。抗体薬はTNF-α、IL-12/IL-23、IL-17を働かなくすることにより、連鎖反応を止める薬剤です。当院では抗IL-12/23抗体(ウステキヌマブ、ウステキヌマブBS)、抗IL-23抗体グセルクマブ、リサンキズマブ、チルドラキズマブ)と抗IL-17抗体(セクキヌマブ、ブロダルマブ、イキセキズマブ、ビメキズマブ)を主に使用します。注射の間隔や効果、副作用がそれぞれ異なるため、患者さんの年齢、病状に合わせた薬剤を選択します。ただ、新しい抗体製剤等は薬剤費が高いため自己負担額が高くなります。自己注射(自宅での注射)や高額医療制度を利用することにより、負担額を減らす工夫ができます。最近、3ヶ月に1回の注射のウステキヌマブのジェネリック(BS:バイオシミラー)が当院でも使用を始めました。抗体製剤を使ってみたいが、高額な薬剤費の点でためらって見える方はご相談ください。
乾癬治療には多くの選択肢があります。高額医療制度や新規治療に関してご質問がある患者様は遠慮無くご質問ください。
乾癬では内臓疾患:心臓疾患、動脈硬化、高血圧、高脂血症、痛風、糖尿病の合併が2倍近く多くなります。薬剤の飲み合わせなど皮膚科と内科の治療薬の調整が必要な場合もあります。当院では内科専門医、循環器内科専門医と連携し、より効果的な治療を行うことができます。